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貨物時刻表を書店売りする意外な理由

貨物時刻表を書店売りする意外な理由
都内の書店で平積みにされていた、鉄道時刻表。 何気なく通りすぎようとしたところで、思わず足が止まった。 パッと見、昔からおなじみの、赤と白のロゴが表紙におどる時刻表だったのだが……。 貨物……!? <貨物>って書いてある。 そう、時刻表は時刻表でもコレ、貨物列車の時刻表、「貨物時刻表」(2500円・税込)だったのである。 そりゃあ、列車が運行されている以上、貨物列車に時刻表が存在することは当たり前のことである。そこは全く不思議ではない。 しかし、それが書店で販売されているのはどうしてなのか。一般の利用者には基本的に縁のない、なんとなく「業務用」的な存在のようなものに思えるが。 「貨物時刻表」とはどんなものか 手にとってパラパラめくってみると、おなじみのスタイルの時刻表があれば……。 線でつながれた、見慣れないスタイルで書かれた表もある。 これは、「機関車運用表」という、時刻表とはまた異なるものらしい。 一般の時刻表では見かけない、「コンテナ」という表記も。 そのいっぽうで、“一般向け”らしく、「貨物駅の紹介」や「鉄道貨物輸送の仕組み」、「JR貨物の主要な車両」といった、読み物や企画ページが、巻頭と巻末にボリュームを割いてあったりもする。 それにしても、この貨物時刻表を見て、「○時△分、××駅だね」と、発着時間や駅を知ったところで、乗車できるわけではないはず。そもそも一般の乗客は貨物駅に入れないだろうし、切符も買えない。 「貨物時刻表」を発売している理由とは この「貨物時刻表」を一般売りしているのはなぜなのか。 強いて言えば、鉄道ファンが撮影するとき、このへんをこの車両が通るとかを知るにはありがたい存在なのかもとは推察できる。『貨物時刻表』の発行元、公益社団法人鉄道貨物協会をたずねた。 「貨物時刻表は、もともとは国鉄時代から業務用資料としてあったものを、書籍のかたちにして発行したものです」 鉄道貨物協会調査部部長の田畑努さんが言う。 「貨物時刻表」が最初に発行されたのは、1978年のこと。しかし、当初は書店での一般販売ではなかった。 「おもに利用運送事業者向けですね」 そう、コンテナなどに入っている荷物を“発”のお客さんから集荷し、“着”のお客さんのところまで配達する“利用運送事業者”のための資料としてのものだったのである。 鉄道貨物輸送の総合ガイドブック 書店で販売されるようになったのが、1991年。2011年に同協会は公益社団法人になり、広く一般向けに発行することから、巻頭や巻末の企画物ページを加えるようになった。 車両の紹介企画を見ると、最新型のものや懐かしいスタイルのディーゼル車両など、現在運用されている貨物車両にはどんなものがあるのかもよくわかる。コンテナにも多用な種類があることも知ることができる。 読者からの写真投稿ページもある。各地の美しい風景を貨物列車がゆくものが多い。 「車両だけでなく、風景と一緒のもので、『貨物列車のある風景』といったところでしょうか。なかなか雰囲気ある写真が集まります」 “鉄道貨物輸送の総合ガイドブック”なのだそうだ。 読み込んでみると、到着時間と発車時間の間がけっこう長いことがあることに気がついたりする。それってつまり、その駅でのコンテナの積み降ろしの時間ということか。よく、時刻表を見て居ながらにして旅行気分を味わうということがあるが、居ながらにして鉄道で運ばれる「コンテナ気分」が味わえそうだ。 先ほども述べたように、鉄道貨物輸送というものは、利用運送事業者との連携が肝心なのである。コンテナは、専用のトラックでコンテナごと車体に乗せて運搬される。 「鉄道コンテナ輸送は、運送手段のモードのひとつなんだということも、意外と知られていないんですね」 今の生活に欠かすことのできない物流を知ることができる。 鉄道イベントなどにブースを出し、この『貨物時刻表』を販売すると、いろんな反応があるという。 「『貨物って、こんなに面白いんですね』とか、『貨物列車の時刻表があるなんて、初めて知りました』とか。貨物列車に興味を持ってもらって、どういう役割を果たしているのかを知ってもらえるきっかけになってもらえたら嬉しいですね」 夏も終盤だが、秋の行楽シーズンも近づく。 貨物時刻表を手に貨物列車ウォッチング、または自宅で時刻表を読みながら、運ばれていく「貨物気分」になってみる、というのもアリかもしれません。 (太田サトル)
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