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【鈍機翁のため息】(163)贋作騒動 II 下手人は海戦の戦友か

【鈍機翁のため息】(163)贋作騒動 II 下手人は海戦の戦友か
 さて、アベリャネーダの正体についてだ。ポルトガル人がせっせと日本人を奴隷として世界各地で販売していたころ、セルバンテスはスペイン海軍の軍人となり、1571年のレパントの海戦に参加する。このとき左腕に被弾して重傷を負ったことは何度も書いてきた。アベリャネーダはセルバンテスの左手が不自由なことを揶揄(やゆ)するかのように『贋作(がんさく)ドン・キホーテ』の序言にこう記すのである。《片手と言いますのは、ご本人自ら隻手(せきしゅ)だと申されているからであります。それにかの御仁は人のことをとやかくと申されるが、当のご本人についてわれわれは、手先よりも口先ばかりが達者であると申さねばなりますまい》 これを読むだけで、アベリャネーダがセルバンテスに根深い恨みを持った人物であることが想像できる。そこで浮上してくるのが、セルバンテスとともにレパントの海戦を戦ったヘロニモ・デ・パサモンテというアラゴン人である。日本人にはなかなか理解しにくいが、贋作にはアラゴン訛(なま)りが散見されるうえ、この人物、自伝をものするほどの文才を持っていたという。加えて贋作では、キホーテがサラゴサで開かれる馬上槍(やり)試合に向かうが、アラゴン地方の州都であるサラゴサの描写がきわめて正確なのだ。
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