【文芸時評】5月号 感動は説明できない 早稲田大学教授・石原千秋
荻野美穂『女のからだ フェミニズム以後』(岩波新書)を読んで、これは医学の問題であり、資本主義の問題であり、そして文学の問題でもあると思った。荻野美穂は長く生殖技術の問題を告発的に論じてきた研究者だ。帯の惹句(じゃっく)に「わたしのからだは、誰のもの?」とある。タイトルも含めて、「体」を「からだ」と平仮名で表記した意味も重い。漢字は男の文字で、平仮名は女の文字だったからで、「女のからだ」は男には手渡さないという決意が見える。