【きょうの人】米プリツカー賞に輝いた建築家、坂茂(ばん・しげる)さん(56)「自分の経験を、家を失った人のために」
自他ともに認める「行動する建築家」が、今年の米プリツカー賞に輝いた。「驚きました。自分がそのレベルにあると思わないので」 オフィスビルや住宅、美術館など一般の設計活動と、災害支援を両立させている。被災地では再生紙の紙管(しかん)など、安価で入手可能な材料を使う。東日本大震災では、宮城県女川町にコンテナを重ねた3階建て仮設住宅を実現させた。限られた用地に、プライバシーを尊重した居住空間を確保しようと心を砕いた。「大変な思いをした人たちだから、仮設であっても住み心地が良く、美しいものを提供したい。住人の方が『もう出たくない』と言ってくれたときほど、うれしいことはありません」 支援活動の最初は1995(平成7)年、国連難民高等弁務官事務所と協力し、ルワンダ難民に提供した紙管とプラスチックシート製の緊急シェルターだった。同年起きた阪神大震災では「紙のログハウス」と「紙の教会」を建設。以降20年、世界のどこかで災害があるたび駆けつける。その活動は徐々に知られるようになり、今では現地の大学教授や学生らがチーム作りに協力してくれるという。