【書評】『紅白歌合戦と日本人』太田省一著
今年もまもなく放送される、大みそか恒例の「国民的番組」(今年で64回目!!)を「私たちはなぜ、見続けるのか」。著者はそう自問し、戦後復興の中での誕生、〈安住の地(ホーム)〉となった瞬間から、昭和38年の「高揚」(東京五輪前年、歴代最高視聴率獲得)、美空ひばりの“落選”を経て、〈脱・安住の地〉化、ワイドショー化、歌謡曲の衰退、SMAPの登場…そして3・11以後までを、膨大な資料を引用しながら鮮やかな論理立てで、微に入り細にわたって解き明かしてみせる。読者(視聴者)は何度もひざを打ちつつ、戦後日本人の精神史の変遷を見届けることになる。