【書評】誰にも眠っている醜き因子 『チャイルド・オブ・ゴッド』コーマック・マッカーシー著、黒原敏行訳
自身の内(うち)に認めたくない醜いものを見つけてしまったとき、人はその部分をおのれの外へと弾き出し、目を逸(そ)らそうとする。真の自分と向き合う緊張状態に耐えられないからだ。しかし疎外された自己の一部は、決して消え去ったわけではない。不可視の闇の中に身を潜めただけであり、いつか必ず浮上してくる。コーマック・マッカーシー著『チャイルド・オブ・ゴッド』は、そうした人間の負の側面が白日の下にさらけ出される瞬間を描いた犯罪小説だ。