【写真集】英伸三『桜狩り・昭和篇』
昭和40年代後半、北上する桜前線を追いながら撮影したモノクロ写真を編み直している。英(はなぶさ)伸三氏は当時のことを「都市は過密と公害、農村は労働力の流出による過疎化など、回ってきた高度経済成長の付けにあえいでいた」と記す。炭鉱、団地、都市の公園、工業地帯、廃校…さまざまな場所で咲く花とともに、「列島改造ブーム」に沸いたころの日本社会の様相が伝わってくる。“昭和の春”をえぐる視点の確かさと、その普遍性に改めて驚かされた。袋とじの製本や挿入される寺本建雄(たけお)さんのイラストなど、凝ったブックデザインも魅力的。(日本写真企画・2940円)(存)