【紅と白 高杉晋作伝】関厚夫(180)疾風篇 談判(七)
「四カ国のやつらのいいぐさたるや、こうじゃ。『われわれは馬関(下関)を火の海にすることもできた。なぜなら、長州軍だけでなく、馬関の民家からもわれわれに発砲をくわえてきたからだ。しかしながら、われわれがあえて馬関を攻撃しなかったために長州藩は莫大(ばくだい)な損害を回避することができた。長州藩はその分を賠償として支払わねばならない』だとさ」 「なんじゃ、それではまるで、身代金のとりたてではないか。欧州(ヨーロッパ)や米国(アメリカ)には武士道はないのか! それでまさか、聞多(ぶんた)、おぬしがいながら、言い値で承知をしたのではあるまいな!」 たがいに命があったことを喜び合うこともそこそこに、晋作はおもわず聞多を問詰するような調子になった。