【紅と白 高杉晋作伝】関厚夫(162)疾風篇 入牢(六)
「聞多の論旨は至当。身をなげうって国家の将来を憂慮する精神は称賛すべしである。まことに理はあるけれども、目下の形勢を鑑(かんが)みるに、攘夷の中止は言うべくして行うべからず。まず馬関(下関)において外国軍艦相手に奮戦し、勅意(天皇のおぼしめし)である攘夷へのわが藩の誠意を天下に明らかにし、しかるのち、朝廷にはたらきかけ、(「八月十八日の政変」でこうむった)冤罪(えんざい)をそそぐほか、わが藩には道はない」 と言ってため息をついたという。