【紅と白 高杉晋作伝】関厚夫(159)疾風篇 入牢(三)
一日(いちじつ)、獄門に至る人あり。獄吏に予の安否を問いて去る。何人のなすことか知らず。よって小詩を賦(ふ)し、その誠意を謝す》 晋作の「投獄日記」のなかにある、元治(げんじ)元(1864)年5月6日(旧暦)の記述である。入牢してから1カ月あまり。ひとり読書と詩作、そして憂国と自省の念の日々をおくっていた晋作を心配して、前日の5日、野山獄にたずねてきた人物がいる。だれなのかはわからない。ならばせめて「友人なおありて義を忘れず」の漢詩をおくろう-というのが大意である。