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【紅と白 高杉晋作伝】関厚夫(132)奇妙篇 混沌(一)

【紅と白 高杉晋作伝】関厚夫(132)奇妙篇 混沌(一)
 「玄瑞(げんずい)よ、くにというものが大きくなるためにはいくつもの戦(いくさ)をせねばならぬらしい。英国(イギリス)や仏国(フランス)がそのよい例だ。いずれもいまのような大国となるまでに数々の苦しい内戦をへてきているし、露国(ロシア)などは、『百戦危難の中』からうまれてきた国だという。たしかにその戦をするさいに大義は必要だ。大義のない戦なぞ、私戦だ。しかし、大義があるからといって、おのれの力量も考えずに、やみくもに戦をしてどうする。そんなことをしていてはくにが大きくなるどころか、ほろんでしまうぞ」 「高杉君-」 「なんだ?」 「いや、やめましょう。話をつづけると高杉君とけんか別れになりそうですから。わたしはそんなことはしたくありません」 「玄瑞…」 「でも、いつの日か、それがわたしのいう回天の義挙であることを願いますが、長州を焦土にする覚悟で戦にのぞまなくてはならぬときがくるとおもいます。それによってたとえ長州という国はなくなっても、そのかわりに、日(ひ)の本(もと)というくにをうむための戦のときがくるとおもうのです」 「…」 「やあ、すっかり長居しました。松下村塾以来、高杉君とおはなしするとどうも長(なが)っ尻(ちり)になってしまいますね。じつは今夜のうちに京への帰路につかねばならぬのです。きょうのところはこのへんで退散することにいたします。アッハッハッハ」 玄瑞は、高らかに笑って一礼すると、ゆっくりと立ちあがりきびすを返した。玄関まで送ろうとした晋作の目に、そのときはじめて見たようなあざやかさで、玄瑞の羽織に縫い込まれた桜の花を大きくあしらった家紋がうつった。
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