奈良から世界へ― UNWTOアジア太平洋センター・移転記念講演会(2)
講演会では、UNWTO本部からゾルタン・ソモギ上級部長が登壇し、「世界の観光動向」を演題に講演。観光の重要性と目指すべき方向性についてUNWTOの考えを披露した。ゾルタンさんは今年、世界の観光客数が通年で初めて10億人を突破する見込みであることを念頭に話を展開。「世界経済が弱含みのなか、観光は影響を受けず、強さを発揮している」と強調するものの、雇用やGDPなど経済分野としての存在感がもっと認められるべきとして「10億という数字をどう捉えるのか。経済の一環を担うものとして周知に励み、旅行業の発展に取り組みたい」と課題を挙げた。
一方で、観光は世界を豊かにするものとしながらも「無限に開発していいものではない」と注意も喚起。「持続可能性、環境などを考慮すべきで、人間の搾取にも注意を払うべきだ」と、拡大を続ける観光分野が今後も守っていくべき方針への同意を促した。
アジア太平洋地域については、1―8月の伸びが世界でもトップレベルで、なかでも北アジアでは日本の存在が大きいという。地域間の協力体制を維持していくためにも、同センターへの期待は大きく、「地域内の情報交流、連携が重要。もっと深めてほしい」と要望した。
続いて登壇した石森秀三・北海道大学観光学高等研究センター長は「東アジア観光共同体のすすめ」と題した提言を披露した。
石森さんが近年の日本の世界的地位の低下、力の衰えが見られる中で、どうしていくべきか考えた上で出した案が「東アジア観光共同体」。今後も続くだろう世界の多極化の流れを見据えると、欧州連合(EU)のような地域間協力、国際連携による「観光」振興が重要であると分析し、ASEAN10カ国と日中韓・インド・オーストラリア・ニュージーランドによる観光共同体を形成すべきと論じた。持ち回りによる「文化首都」「観光首都」を設置するなどの具体案を披露し「センターの奈良事務所が中心となって提唱するもの今後の日本を考えたうえで1つの手」と提言した。
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