観光立国の正体
インバウンドが年間2千万人を超え、観光立国が結実したかのように思えるが、その土台は案外もろい。化学肥料を大量にぶち込み過ぎて、1回の収穫で土がダメになってしまうかもしれない...。藻谷浩介さんと山田桂一郎さんがタッグを組んだ「」(新潮新書)を読んで、そんなことを思った。山田さんが観光立国のロールモデルとして提示しているスイスは、歴史や地理的背景から長い年月をかけて「土づくり」を着実に進めている。それも観光事業者だけではなく様々な業種の住民の手によって。
お天道様認める可能性
一方、我が国では補助金という名の化学肥料を待っている「ボスキャラ」が跋扈し、土づくりから始めようとする新参者が干されるような状況にある。
この彼我の差に愕然とするのだが、北海道弟子屈町や飛騨市古川、富山県など「地域の価値を向上」させ再生を果たした地域があることも提示。「日本の観光には無限の可能性」があると2人そろって指摘し、藻谷さんは「日本の観光が盛り上がらないなんてことは、日本人が許してもお天道様が許しません」と言い切った。
2人の講演を聞いた人はご存知だろうが、本書中には「地域ゾンビ」「ボランティアガイドはストーカーと一緒」「おもてなしは日本人都合の押し付け」など刺激的な表現がてんこ盛り。固有名詞もどんどん飛び出す対談は痛快だ。
「」という有機肥料で、皆さん土づくりからやりましょう!