四字熟語で2016年の観光を占う(4) 数から質へ、高み目指す段階に
【再綻距離】は、佐藤さんがいう「再考」「再訪」の必要性からの【再】、これまでの無理が響いて至るところで綻びの露呈を危惧する松坂さんの【綻】を組み合わせた。「観光立国の質」を再考 宿泊産業に課題多く
お2人に共通するのは、前述の山田さんも含めて「観光立国の内容=質についても考えねばならない。地方創生の視点からも『再生』を含めて自らの地域の観光に係る質について再考する年」(佐藤さん)、「立国という言葉は力強いけれど、世界はたった一本の柱でうまくいくような単純なものじゃなくなっている」(松坂さん)ということ。
さらに松坂さんは30年前、雑誌の取材で聞いたNECの社長の話を挙げた。「コンピュータ立国で日本は行けますかね、と質問したら、戦前ならともかく今は「立国」という考え方自体を疑わなきゃダメなんだ、その掛け声が麻酔的で人の知性を鈍らせると断言しておられた。NEC全盛の時代の発言です。立国が『傾城』(けいせい)にいつでも変わり得る」。
遠回りのようでも、地域や足元からの積み重ねこそが最短距離なのだと指摘する。
【強宿至極】は、宿泊産業が代表して最短距離で極みを目指すべきだとの至言。小原さんの【強】は、旅館ホテル業界が様々な課題に対し「強い対抗力」を持ち、「強力な団結」で「他産業をもリードするぐらいの力を持つことが肝要」とする。
【宿】とした橋爪さんも「全国の主要な観光都市においてホテルの不足が顕在化している。今年は課題を解決するべく新規開業が進むだろう」。Airbnb(エアビーアンドビー)への対応と民泊のルールづくり、規制緩和によって歴史的建築物や古民家群を宿泊施設に転じさせた兵庫県篠山市の取り組み、米国などで流行しているグランピングなど多様な宿泊施設、滞在スタイルが各地に広がると予測し、新たなモデルの出現を期待。
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2016年の国内観光は「3月の新幹線新青森―新函館北斗間の開通によって、北海道が人気となる」(佐藤さん)、「それ以上に東京の注目度が一層ヒートアップ。星野リゾートが東京に出店、TDRの新アトラクション・新オフィシャルホテルも誕生して、メディア露出も増える」(井門さん)とみる。
一方、爆増したインバウンドについては「いったん踊り場」(井門さん)に入り「増税や世界経済の動向次第では浮かれムードがオリンピックまで続くとは限らない」(永山さん)ものの、「経済の低迷、増えない実質賃金、改善されない非正規労働者割合、17年4月の消費税引き上げなどマイナス要因が多く、15年以上に外国人依存度が高くなる」とも。
最後に今年1年は「人に関わる仕事としてさらなる優しさを身につけ」(永山さん)、「地域も事業者も、もっと高い目的と目標を持って経営に臨んでほしい」(山田さん)ということを目指していきたいものだ。
(トラベルニュースat 16年1月1日号)
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