松原と地域創生
先日、四国のあるまちに出向いた。といっても特に有名な観光地や施設があるわけではない。まちを歩いて松原に行ってみた。すると、版画家・棟方志功が夫婦で訪れ「世界一の松。四国で一番素晴らしいところだ」と絶賛していた松原だった。聞けば、日本映画の黎明期にあって時代劇の多くがこの松原を舞台に撮影されていて、日活の黄金時代の映画のロケも頻繁にあり若かりし石原裕次郎や小林旭、浅丘ルリ子らの俳優が訪れていたそうだ。日本画家の平山郁夫は、この松原で写生して大作を残した。その場所は、松原にちゃんとポイントとして紹介されていた。
また、松原内の美しい松を神に見立てて七福神めぐりができるようになっていたり、恋愛成就スポットとして「願い叶え橋」が用意されているなど、松原を生かそうという取り組みも感じられたのは、思わぬ収穫だった。
ところが、本稿を書くに当たって改めて調べてみると情報発信がほとんどなされていない。歴史が豊かで、松にこだわった取り組みも行われているのに、だ。
これはこの松原に限ったことではない。地域では当たり前のことが大きな観光資源であったりする。歴史を掘り起こし、その情報を発信することが地域創生そのものだろう。
(トラベルニュースat 15年7月25日号)