地旅と歩んだ5期10年 池田孝昭さん(全旅前社長)(3)
―やり残したことありませんか。
商売に限界はありません。やろうと思えば死ぬまでやらなければなりません。やり残したという考えはなく、その時その時に役職員の皆さんとともに事業を推進したことには満足しています。業界連携で"三方よし"目指す
ただ、今懸案なのは全国のANTA会員5400社が地域、地域で事業展開しているものの、なかなか行政関連、修学旅行など大きな仕事をできていないことです。我々は都道府県知事から登録を受けて、一生地域住民、定年も転勤もないのですが、中小旅行業者に大きな大会やイベント、修学旅行は無理だろうという考えがあると思うんです。そこで、一昨年から全国ネットワークを持っている日本旅行さんと業務提携をしました。地元での人脈に長け機動力や奉仕の精神が旺盛な我々会員とが提携することによって、お互いのいいところを出し合い、マイナスの面をカバーし合う。そのことによって大きな仕事の依頼がくるのではないかと考えています。
どのようにしたら双方がベターで、最終的にお客様にどう喜んでもらえるのかを目指すべきでしょう。地元の旅行業者が仕事を受けることによって、地方行政の税収がアップすることになるわけですから、そのぶん地域住民の皆さんにサービスを提供することができるようになる。近江商人のいう三方よしの精神です。大手だけでも、地元の中小だけでもダメ。両方が手を相携えることによって、すべてよしという方向性になるのではと思います。
「第1回地旅博覧会」で地旅の意義を伝える
また、私の仕事で進行中なのが「地旅の宿ネットワーク」です。これは旅館ホテルさんと着地型旅行商品をともに造り販売するという、受入施設の皆さんと協働でやっていこうというものです。朝食前に少し早起きをしてホテル周辺の見どころをご案内するとか、夕食後に夜の体験や観光を楽しんでいただくとか、連泊する方には日帰りの着地型旅行商品を売るとか、いろんな形で我々と旅館ホテルさんがタイアップをしてお客様に対するサービスを提供する。せっかく来ていただいたお客様に何度も来ていただけるよう仕掛けを行うことで、人と人との付き合いが生じ地域の良さをわかっていただく。それが定住人口を増やすきっかけになるかもしれません。
旅館ホテルさんと我々がタイアップして行う着地型旅行は大きな可能性があると思います。九州地区ではすでにスタートし商品も造りました。今後、全国10ブロックでも設立いただいて、最終的には全国をネットワーク化する。そのことによって地域の活性化が図れるのではないかと考えています。
加えて、海外からの留学生を旅館ホテルさんに実習という形で受け入れていただき、滞在中に地域の商品づくりにも関わってもらう。単なる接遇の研修だけではなく地域の素晴らしい観光素材を見てもらうことによって、留学生が自国に帰った時にその地域の良さを認識しそれを広める意識になれば、お互い素晴らしい人間関係ができ上がっていきます。そんな密接な関係ができあがると、いさかいもなくなります。
そのようなことも視野に入れると旅行業は実に楽しい仕事です。
→地旅と歩んだ5期10年 池田孝昭さん(全旅前社長)(4)に続く
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