【次代への名言】司馬さん、遼(はるか)なり編(65)
《二十三歳の誕生日があと一週間でくるという日-一九四五年、敗戦の日だが-に、日本がひっくりかえった。昭和前期日本という、日本史のなかで異形(いぎょう)の国家がほろんだのである》 『街道をゆく 神田界隈』の一文だ。このあと、司馬さんは、《このことは、しばしば書いてきた》とことわりながら以下のようにしるしている。《(日本人は、むかしからこんなぐあいだったのか)/と、おもわざるをえなかった。むかしは、ちがったのではないか。…》 冒頭の一文は、終戦から46年後の平成3(1991)年、湾岸戦争が多国籍軍の勝利におわったころのものである。