【鈍機翁のため息】(159)エスペレータ事件 II 世間の好奇の目にさらされて
セルバンテス研究の第一人者であるジャン・カナヴァジオはゴンクール賞を受賞した『セルバンテス』の中で、《確かなことは、彼(バリャドリード市長)が、自分のイニシャティヴによってにせよ、上司の権力を借りてにせよ、故意に追及を困難にして、真犯人を逮捕しないために、自分の権限を全面的に発動したことである》と記している。いつの時代にも、権力による意図的な冤罪(えんざい)事件は起こる。この観点に立つと、死刑制度はどうなのか、とつい考え込んでしまう。