【書評】『処女神 少女が神になるとき』植島啓司著
ネパールのカトマンズ盆地には3~4歳の少女から「生き神(クマリ)」を選び、12~13歳のころまで崇拝の対象とする風習がある。宗教人類学者の著者が初めてクマリと出会ったのは1982年。以来、毎年のように現地調査を重ねてきた。処女神を起点に、宗教の起源、神の概念、聖俗の境界などなど…縦横無尽に考察が展開される。〈ぼくの謎解きはいつも謎のまわりを旋回するように飛び、むしろ謎そのものを深くしてしまうだけ〉と冗談めかしつつ、謎をめぐる移動と出会いと思索、そのプロセスにこそ、フィールドワークの面白さがあると教えてくれる。