【鈍機翁のため息】(144)帰還IV 良識の懐にお戻りなさい
さて、己の便意は認めたものの、キホーテは自分が魔法にかけられているという考えを撤回しない。《(魔法にかけられていないにもかかわらず)今この瞬間にもわしの助けと庇護(ひご)を緊急に必要としておる者たちに援助の手をさしのべることができずにいると考えたとしたら、わしの良心の呵責(かしゃく)はさぞかしい大きなものになっていることであろうて》というのである。少しばかり虫のいい思考ではあるが、遍歴の騎士としての志にいっさいブレはない。