【書評】文化部編集委員・宝田茂樹が読む『This is the Life』
兄と弟の物語である。かつては落ちこぼれだったが、いまは妻子とともにイギリスで暮らしている弟の「おれ」の名前は明かされない。アレックス(著者名)なのかもしれない。兄の名前はルイスだ。頭脳明晰(めいせき)で優秀だったが、高学歴にもかかわらず定職につかず、早くから家を出て、ここ数十年はオーストラリアで放浪にも近い生活を続けてきた。が、あるとき、ルイスの脳に悪性の腫瘍ができたと知らされた「おれ」は単身、オーストラリアに飛んでいく。こうして、病気と闘う兄と、面倒をみる「おれ」の2人だけの生活が始まる。