【鈍機翁のため息】(122)4人の恋の物語 I ドロテーアとの出会い
嗚咽(おえつ)をもらしていた男は、いかにもカルデニオであった。彼は説得を試みる司祭に対して《立派な言葉で説得にかかる前に、どうかお願いですから、終りのないわたしの不運の話をお聞きください》と嘆願する。もちろん、ゴシップの好きな司祭と床屋(とこや)のふたりに異論のあろうはずがない。ここからセルバンテスはキホーテを放置して、カルデニオ、ルシンダ、フェルナンド、ドロテーアの不幸にねじれた恋の物語を長々とつづり始める。要約しよう。