【書評】『江戸〈メディア表象〉論 イメージとしての〈江戸〉を問う』
江戸はエコロジカルな都市で、歌舞伎や浮世絵のような高尚な庶民文化と、からくり人形のような先進的なものづくりのテクノロジーをもっていた-とされている。しかし本書では、先入観を排して江戸という時代と文化をとらえ直す。するとたとえば、ものづくりをめぐる言説は、経済的不調が続く現代日本で、「ものづくりの伝統」を鼓舞する風潮が、歴史にその源泉を見つけようとして、江戸文化に行き着いた、と見る。ほかにも「鎖国」「坂本龍馬」などをめぐる常識が、実は後世の都合によって“編集”されたものであることを浮き彫りにする。