【書評】『歌集 泥と青葉』小島ゆかり著
小紙「歌壇」で選者を務める著者の、前作『純白光』(短歌日記2012)に続く第12歌集。平成21年夏から25年初夏までの、ほぼ4年間に詠んだ作品の中から選んだ511首を収めている。タイトルについて著者は「あとがき」で、「この世を生きる命への恐怖と畏怖、そして生き続ける命への祈りと言ったらよいでしょうか。しかし現実には、底深い混沌(こんとん)に足をとられるような、言葉にしがたい感覚をどうにも表現することができなかった」と書いている。東日本大震災と、その後の原発事故をめぐる社会と人心の変容が読みとれる歌も多い。