【鈍機翁のため息】(44)風車の冒険 V 中世と近代の激突
本筋に戻ろう。野原を進むキホーテとサンチョの前に、30から40の風車が姿を現す。キホーテの目にはこれらが醜怪な巨人の群れに映った。自分に冒険を与えてくれた運命の女神に感謝しつつ、キホーテは《拙者はこれから奴(やつ)らと一戦をまじえ、奴らを皆殺しにし…》と決意する。サンチョが《風にまわされて石臼を動かす、あの風車ですよ》と懸命に制止するが、キホーテは耳を貸すことなくロシナンテに拍車を当て、全速力で風車に突撃していく。風車の羽根に槍(やり)を突き立てるや、強風が羽根を激しく回転させたため、キホーテはロシナンテもろとも宙に舞い上げられ、次の瞬間、地面にたたきつけられてしまう-。風車の冒険は、かくのごとくあっけなく終わる。