3月21-4月13日 藝大美術館で長浜市の観音像展
「観音の里の祈りとくらし展 びわ湖・長浜のホトケたち」が3月21日-4月13日、東京・上野公園の東京藝術大学大学美術館で開かれる。滋賀県長浜市の寺社に祀られている国指定重要文化財3点を含む18の観音菩薩像などが展示される。ほとんどが集落で受け継がれ守られてきた「庶民仏」と呼ばれる観音様。展示会では観音様が暮らしのなかにある長浜のくらしにもスポットを当てる。観覧料は大人500円、高校・大学生300円、中学生以下は無料。
18点の観音像のうち9点は長浜市指定の文化財。堂外で初めて展示される3点を含め、いずれも東京では初公開。8世紀の奈良時代後期から9世紀の平安時代はじめの創作とされる観音像も含まれている。
1月22日に東京・浜松町で、藤井勇治・長浜市長、関出・東京藝術大学美術館館長らが出席して、展示会の概要についての発表会が開かれた。
長浜市には国・県。市指定の文化財が445点ある。なかでも観音像は100体以上あり8-9世紀につくられた古仏が多く残っている。その多くは戦禍が及ぶのを集落の住民が守ってきたものだという。
「戦のたびに、地域の村人が田んぼに埋め、川に沈め守ってきたのが今回展示される観音像です」。藤井・長浜市長は戦国時代に多くの戦があった長浜で、1200年以上も観音像が守られ信仰されてきた歴史をそう話す。
ただ、こくした繰り返しで破損仏も多い。今回展示される千手観音立像(重文)は多くの腕を腕失い、残った腕の多くも肘から先がない。菩薩型立像と如来型立像にはひび割れがある。
12世紀の作とされる十一面観音立像は腹に晒しを巻いた姿で、これは織田信長が北近江に攻め入った元亀争乱の際、観音像に戦禍が及ばないように村民が蓮池に埋め、その後掘り出したときに、多くのさらしで像を清めたことに由来するという。腹帯観音の通称で親しまれ、安産祈願に訪れる人も多い。
「観音像にはひび割れや虫食いなどの経年変化はあります。しかし、1000年もの間、村民の敬虔な祈りを受けてきたオリジナルが持つ強さがあります。観音像を通して村民の強い思いに着目してほしい」
東京藝術大学大学美術館の関館長は、展示を通じて観音像への信仰が、今も村民の生活のなかに継承されている湖北の暮らしを表現したいと抱負を述べていた。
観音像は無住の寺に祀られているものが多く、毎日のお参りは集落の世話役が行っている。多くの腕を失った千手観音立像もその1つ。無住の赤後寺に祀られている観音様の世話役を唐川集落の80戸の住民が交代で務めている。展示会の説明会には世話役の1人、上松茂樹さんも出席した。
「6人の世話役で365日休みなくお参りしています。3度お参りするとご利益があると言われています。1度目は展示会で、2度目、3度目は是非、長浜でお参りしてください」
主催者や村民は「観音の里の祈りとくらし展」を長浜訪問のきっかけになることに期待している。