【一服どうぞ】裏千家前家元・千玄室 人生とは何であるか
「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず、となり。この分け目を知る事(こと)、肝要の花なり」。世阿弥(ぜあみ)(1363~1443年?)が記した『風姿花伝(ふうしかでん)』の一節である。能楽などに関心を持たない方には何のことだと思われるであろう。秘するすなわち秘密にすれば花となり、秘密にしないと花とはなるはずがない。それだけのことだが、芸道における修業の大切さを言っているのである。少年期の花は一時的な花という。稽古に励むことができても、本当の花ではない。学問の道においては基礎を学び、それを応用できるまでの課程の時期である。