針路は「船に泊まろう」―フェリーさんふらわあ(1) 好調要因に迫る
フェリーさんふらわあでは2011年2月に関西と九州を1万円で往復する「弾丸フェリー」を運航。同年5月から阪神・別府航路開設100年を記念したキャンペーン「昼の瀬戸内 感動クルーズ」を開始し、現在も年に数回実施し好評を博している。また12年9月には昭和の町で知られる大分県豊後高田市の協力で船内に「昭和レトロなお部屋」、13年6月には1年間の契約で各航路に「くまモン」「ハローキティ」のキャラクタールームを設置するなどの取り組みを実施。乗船客は今年8月が110%、9月が130%と対前年比率は増加し、インターネットのアクセス数も11年当時の13万から100万に伸びている。11月3日に今年最後の昼便を控えたフェリーさんふらわあの井垣篤司常務に話を聞いた。井垣篤司常務に聞く 生きる道は「瀬戸内海の船旅」
―弾丸フェリー、昼の瀬戸内感動クルーズはいずれも好調です。始めたきっかけは。
当社は2009年の11月にダイヤモンドフェリーと関西汽船を事業統合、11年10月に合併し、スタートを切りました。
しかし当時は赤字で、そこから脱却するために当社の弱みと強みを再確認してマーケットに何を売るのかと広告代理店の知恵を借りました。そのとき選んだ代理店が出してきた提案が「船に泊まろう。ただ今、航海中」でした。船に泊まりながら移動し朝着いたら観光地―をアピールするという、ある意味当たり前で分かっていることを簡潔に魅力的な言葉で表現していただいた。
すべては、この「船に泊まろう。ただ今、航海中」からでした。まず始めたのはプレスリリースです。とにかく情報を出すことにしました。情報は何か今までと違うことをしないと出せないので、フェリーの魅力を出すための企画を作り発信し始めたら社内に緊張感が生まれました。直接お金をかけて宣伝するよりも、情報をマスコミのふるいにかけて発信していく方が効果があります。
思いを語る井垣常務
ちょうど瀬戸内航路開設100周年の時期とかぶり、100周年記念で昼便を復活させると言ったのですが、昼便だと従来のお客様を断ることになります。そんなことを赤字会社がしていいのかと相当言われました。しかし、航路開設100周年記念だけではなく、100年間会社があったというのは瀬戸内海があったからこそ。その感謝の気持ちも込めてもう一度、多島美の瀬戸内海を見てほしいという思いから社内を説得し、昼の瀬戸内海航路を復活させることに決まりました。
当社が生きていく道は瀬戸内海の船旅しかないと思っています。本当は毎日でも昼便を行いたいのですが、物流があるのでできません。そこで現在は物流の影響が少ない日、クルーズとして利用しやすい日を選んで実施しています。加えて、昼便は当社でないとできません。当社は神戸と大阪南港から船を出しています。他社は南港から夕方と夜の2便、同じ港から出ています。当社は神戸と大阪から毎日出しているので、大阪をやめても神戸にシフトできます。ですから物流は若干減りますが、昼便を運航することで新しい顧客層を開拓できれば、新しいさんふらわあの展開につながると考えたのです。
→針路は「船に泊まろう」―フェリーさんふらわあ(2) 顧客満足への意識に続く
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