【書評】『潮鳴り』葉室麟著
ここには真実の人生が存在する。人が嘘をつかないで生きている世界がある。出世を目指す男にもてあそばれて身を娼婦に持ち崩したお芳は、武士からはみ出し襤褸蔵(ぼろぞう)と呼ばれるまで落ちぶれた伊吹櫂蔵(かいぞう)と出逢い、自殺から救う。当然のように2人は惹(ひ)かれ合う。しかし、再び武士に戻ることになった櫂蔵の求愛に、お芳はこたえることができない。女中としてなら働くという。もう自分には資格がないとは思いながらも、近くにいたいのである。人情である。
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