【書評倶楽部】アルピニスト・野口健 『空白を満たしなさい』平野啓一郎著
僕は職業柄「死」を感じることが多い。登山を始めて20年以上が経過し、気がつけば自分の年の数ほどの仲間を山で失ってきた。「滑落死」「凍死」「酸欠によるショック死」「窒息死や圧死」…予測不可能な遭難、悪天候の中で闇雲(やみくも)に突っ込んだ揚げ句の遭難。どれも「死ぬ」事に違いはないが、その「死」を一色に染めていいのだろうか。僕は仲間を失う度に、彼らにとって「死」とは、また「生きる」とはどういうことだったのか突き付けられる。