【文芸時評】8月号 評論家・稲垣真澄 組織の行動に求められる倫理
人間社会を構成する主体には、あきらかに個人だけではなく、個人の集まりである組織も含まれる。とりわけ経済活動や科学研究の主体は、すでにずいぶん以前に個人から組織へと移行したと思われる。消費以外の経済活動は大部分が企業や共同体によって担われており、科学研究も大規模なものであればあるほどプロジェクトチームによって遂行される。早い話、最近の理系ノーベル賞はたいてい複数研究者の同時受賞であり、つまり1人の天才よりもチームが肝要視される時代なのだ。