【紅と白 高杉晋作伝】関厚夫(199)雷電篇 一擲(三)
「おれは挙兵する。が、諸君がとどまるならば、失敗におわるだろう。それも致方(いたしかた)なし- が、ともに苦難をわかちあった仲だ。最後の頼みに馬を1頭貸してくれ。おれはその馬を駆って両殿さまのもとへ向かおう。いまは1里行って斃(たお)れるも国家のため、10里行って死ぬも主家のためだ。馬だ、馬を貸せ!」 晋作は《一声は高く、一声は低し。怒るが如(ごと)く、恨むが如く、叱るが如く、嘲弄(ちょうろう)するが如し。その声色ともに烈(はげ)しきときは壁もために震(ふる)い、人々悉(ことごと)く股栗(こりつ)(恐ろしさに足が震えること)す》と記録された演説をおえた。