由布院温泉・輝きの源泉は「ありのまま」 大分県由布市(1)
昨年夏の九州北部豪雨で一部地域が被害を受けた大分県。現在は観光需要も回復しているものの、被害が少なかった地域でも観光入込客が減少するというのが風評被害のやっかいなところだ。全国的な人気を誇る由布院温泉を抱える由布市もそのひとつ。風光明媚な自然はもちろん、まちに暮らす人たちの「元気」は豪雨の前から変わらない。由布市の秋冬の輝きと「強さ」を確かめに、11月下旬に現地を訪れた。暮らしこそが魅力
由布市は"おんせん県"大分にあっても有数の温泉ポイント。由布院温泉のほか、歴史豊かな湯平温泉、日本三大薬湯のひとつ塚原温泉と、阿蘇くじゅう国立公園周辺の大自然のなかに個性豊かな温泉が点在している。ここに来て温泉を楽しまないという選択肢はさすがになく、加えて温泉を軸に個性を放つまちの魅力の源泉を探ることも旅の楽しみだ。
由布院温泉に初めて来た人は「温泉街」がないことに気付く。由布岳のふもとに広がる盆地に温泉宿、住宅、そして田園がゆったりと居を構え、温泉とともに生きる風土を形成している。
「由布院で見てほしいのは、ありのままの、本当の由布院なんです」と語るのは観光ガイド「ユクリエ」の恒吉美智子さん。「ユクリエ」は由布院温泉観光協会が育成した「ガイドのプロ」で、有料でまちの魅力を伝えてくれる。恒吉さんはその第1号で、由布院出身ではないが、その魅力にとりつかれた1人だ。
「ユクリエ」のガイドウオークは田んぼや住宅のなか、工房をゆるりと歩いて金鱗湖を目指す。実際に歩いて、田んぼの真ん中でまちをぐるっと180度見渡す。由布岳がスカッと輝き、のんびりとした空気が流れ、ふもとには湯けむりが見える。都会の喧騒という言葉すら忘れてしまうような趣きに満ちていた。
由布岳を語る恒吉さん。本当に楽しそうに話してくれる
「テーマパークのような観光地でなく、ここに住む人たちの"暮らし"こそが由布院の魅力です」
首都圏からも人気が高く、女性たちの支持を集めるには、それなりの理由がある。恒吉さんの言葉に実感がこもる。
(長池貴志)
→由布院温泉・輝きの源泉は「ありのまま」 大分県由布市(2)に続く
1 | 2