今冬のイチ押しは癒しの音「鳴き雪」 駒ケ岳ロープウェイで千畳敷カールへ
「一歩ずつ踏み出すごとに、きれいな高音で鳴るんですよ」。中央アルプス駒ケ岳ロープウェイの竹村章さんの今冬のイチ押しは、クリッキングサウンド(鳴き雪)だ。雪の上を歩くと音がする。里地や春先の雪は「ミシ」。日本海側で積もった雪は、湿り気を帯びた「ギュッ」。サラサラのアスピリンスノーでは「キュッ」。中央アルプス千畳敷カールの雪は、そのどれにも当てはまらない筆舌しがたい高音。竹村さんは「癒しの音」と表現する。日本では、千畳敷カールと北海道の一部ぐらいでしか聞かれない最高音だという。
平均最低気温マイナス15-16度、時には氷点下20度まで下がる気温と、厳冬期でも晴天率が7割という気候が生み出したと言える"奇跡の音"。これまでも、きれいな雪の音に気づいてはいたが、今年2月にテレビ番組で雪の踏む音が取り上げられたことで、冬の千畳敷カールの売り物としてアピールを始めた。すでに沖縄の旅行会社が商品化、スノーシューを履いて癒しの音ツアーを楽しむそうだ。
冬の千畳敷は、クリッキングサウンドだけではない。積もった雪が風の力で波上の紋様を描く。シュカブラ(風雪紋)という。毎日見られるとは限らないが、場合によってはカール全体に風の筋道のような美しいシュカブラが浮かび上がるという。樹木や岩の風上には、風の力で不思議な形の雪塊ができる。これは、エビの尻尾。樹氷なども見られ、千畳敷カール一帯が「雪と氷の芸術」作品に埋まる。
竹村さんは「稜線上に舞い上がる小さな竜巻上の雪煙『雪のチングルマ』、気温が氷点下14度以下の早朝に見られる『ダイヤモンドダスト』など、冬の千畳敷カールはここでしか、この時にしか出会えない見どころいっぱいです」。
千畳敷カールへは、長野県駒ヶ根市の駒ヶ根高原から専用バス、駒ケ岳ロープウェイを乗り継いで行く。標高2611メートルに建つホテル千畳敷は通年で営業している。スノーシューのレンタルもあり、ホテルスタッフが見守り安全に体験できる。