地熱発電に反対 日本温泉協会、理事会で各地の現状報告
日本温泉協会(大山正雄会長=学術部幹事委員)はこのほど、東京・平河町の全国旅館会館で理事会を開いた。同協会地熱対策特別委員会など、各委員会の活動報告が行われた。同協会では、無秩序な地熱発電開発を、温泉の保護と適正利用に対する最大の脅威と捉え対応に当たっている。大山会長はあいさつで「地熱発電は資源収奪型であり膨大なエネルギーを使う。また開発地は必然的に既存の温泉地に近づく」と警戒する。
理事会では全国48カ所の地熱・温泉発電所一覧が示され、地熱対策担当の佐藤好億常務副会長が「東日本大震災後、国が地熱発電開発を推進するなか、この5年で全国93の地区がバイナリー発電を含む地熱発電開発に手をあげ、すでに26カ所で実施されている」と現状を報告した。
なかでも鹿児島県指宿市の地熱発電開発計画と経過について詳しい説明があった。今年9月、指宿市が市街地でのバイナリー発電計画を認可したことを受け、既存の温泉源への影響を憂慮した温泉事業者などは「泉都指宿の温泉を守る会」を結成し、市民、市議会を巻き込んで反対運動を展開した。同協会でも大山会長らが指宿市を訪れ、市長に対し計画の中止を求めるなど支援にあたった。そうした世論を受けて市長は10月27日の市議会で事業の凍結を表明している。
理事会で下竹原和尚理事(指宿白水館)は「凍結されていた地熱事業は先ごろ、取り下げられることになりました。当初、地熱開発の危うさを知らない人はみんな計画に賛成でした。この会に入っていなかったら、指宿温泉はなくなっていました」と同協会の支援に感謝を示した。
そのほか委員会報告では、同協会の周知や温泉旅行のPR活動として開催していた「旅と温泉展」を休止することなどが報告された。